まち再生は人づくり
今回は、我々がメインストリートプログラム(MSP)を参考とする理由についてお話します。
スポンサードリンク
我々が、今後の日本のまちづくり・まち再生の参考になると考えている理由を述べます。その理由は、以下の4点です。
1 とにかく、実績がある。
MSPは地域の主体性、ボランティアの参加が前提となっています。それを行うために開発されたタウンマネージメント手法と我々は捉えています。
日本では、タウンマネージメントについて様々な論考がありますが、実績に基づく論考は少ないのではないでしょうか。
MSPは既に25年の歴史があり、2,000地区で導入され、そのうち1,200の地区の組織が継続して活動している実績があります。そのことを考慮すれば、国民性の違いがあるにしろ決して無視することができないと思うのです。
常々、我々は実態からものごとを発想することの重要性を意識しています。余談になりますが、イトーヨーカ堂創始者の伊藤雅俊氏は自らの経験を通じて「現場(事実)から出発することが大事だ。ものを考えるとき二つの方法があり、ひとつは演繹法、もう一つは帰納法。演繹法は事実を集めて結論を出すのではなく、一般的な法則に基づいて「こうなるはずだ」「こうあるべきだ」と考える方法。帰納法は経験や事実の中から共通する要素を見つけてある法則を導き出す方法。日本の商人はどちらかというと演繹法で考える人が多い。大変立派な理論を発表するが、実際にはあまり役に立たないことが多い。」と述べています。肝に銘じるべきだと思います。
2 地域主体のコミュニティ再生である
日本では、住民の主体的参加あるいは自主的行動がまちづくり・まち再生の積年の課題となっています。そのことに異論のある方は少ないと思います。
随分昔からまちづくりへの参加が呼びかけられ、近年その成果が徐々に現れ始めてはいますが、現場で実務を行うコンサルタントとしては、まちづくりが行政頼みであることを否定することはできません。
そのことについて、アメリカと日本で大きな差があるのでしょうか。我々は、アメリカと日本でまちに対する住民の意識の差は少ないが、主体性をもって取り組まなければならない社会背景に違いが見られる。具体的にはアメリカが日本を20年くらい先行している、と考えています。
MSPが始まった1980年代初頭、ちょうどレーガン大統領が小さな政府を掲げて登場してくる時期です。レーガン大統領は「アメリカ再生のために週3時間のボランティアを」と呼びかけたそうです。そして、まちの住宅政策や社会福祉関係の事業が行政からNPOへと移管していきます。また、地方主体の経済構造の建て直しが行われ、IT産業を柱とする再生を果たす都市が出現し始めます。
1982年に米国で後に新資本主義革命と言われる経済再生策を掲げてレーガン大統領が登場する。地方再生の事例としてはオハイオ州クリーブランド市(このまちはNPO活動でも有名。ケース・ウエスタン・リザーブ大学マンデルセンターはNPO組織経営の研究で特に有名である。)やテキサス州オースティン市などが有名である。「社会起業家」町田洋次著、財団法人自治体国際化協会HP(自治体国際化フォーラムアメリカ編http://www.clair.or.jp/j/forum/forum/jititai/jititai_america.html)等が参考になる。
その前はと言えば、ピーター・F・ドラッカー氏やレスター・サラモン氏のNPOに関する書物を読むと、アメリカ人もチャリティティ精神が旺盛ではあるが、日常生活の一部としてボランティア活動に参加するような状況ではなかったようです。
ピーター・F・ドラッカー「非営利組織の経営」1990年
レスター・M・サラモン「米国の非営利セクター入門」1994年
アメリカで地域主体のまち再生が本格化した背景には現実的な問題があったようです。
アメリカでは、鉄工や自動車産業などの重工業が1970年代頃から斜陽し、1980年代にもなるとこれらの産業に基盤を置く地方都市は経済的にも社会的にも相当疲弊していたようです。
その様な背景から地域主体の町おこし活動が始まり、日本でもよく知られたオハイオ州クリーブランド市やテネシー州チャタヌーガなど、重工業から脱皮しIT産業を柱とした町おこしがアメリカ重工業斜陽地帯と呼ばれる中西部で始まります。
そして、その様な町おこしの一環としてMSPも広がっていたのです。すなわち、老朽化し疲弊した街なかを更新するという局地的な意義だけでなく、まちそのもの、すなわちコミュニティの再生という全方位的な意義が強かったようなのです。
だから、アメリカの地域主体、ボランティアのまちづくりも、決して国民性だけに頼ったものではなく、必然性から確立していったもののように我々には思えるのです。
よって、日本でも高齢化の問題や地方の経済立て直しの問題など、その必然性が高まれば、地域主体、ボランティア型のまちづくりが定着していく可能性があると思っています。
ただし、今の時点で将来のことを確約することはできません。だから、将来論を議論する気持ちはありません。いずれにしろ、日本において過去、自治体が破産の危機に瀕するような経験がなかったのは事実です。そのため、コミュニティ再生の方法論が日本においては用意されていません。
MSPはまちを物理的に再生するということ以上にコミュニティの再生に意識を置いたものであると我々は理解しています。だから、先行事例から学ぶ必要があると考えるのです。
3 まちづくりのマネージメントとは何かを学ぶ
自主的に参加し、行動する必然性を感じなければ、人は自ら動くことはないでしょう。日本のまちづくりの課題はそこにあります。
現在のところ、その動機は金銭面の利得になっています。そのため、現状の都市再生はそこに働きかける手法が主流です。しかし、この方法は、金銭面の利得が生じない地域、力のない地域は行えないと言う問題があります。あるいは、行政が強力介入する意義付けやそれにともなう公的な投資効果が立証されなければならないと言う課題があります。
しかし、この問題についても、将来の不安からこれをとりただすことは意味のないことです(将来は誰にも分からないのですから。それに、MSPにおいても金銭的利得は非常に重視されています。金銭的利得なくして人を動かすことは難しいでしょう。)
問題は、動機付けの要素は金銭的利得だけではないと言うことです。
これを「どうやってやる気を出させるか」というマネージメント論から考えてみたいと思います。
話を変えますが、マネージメントとは何でしょうか。マネージメントというと「経営」と訳され、「事業を効率的に管理運営すること(たとえば金銭的収支構造を健全にすること)」をイメージします。
ですから、タウンマネージメントというと「まちを効率的に管理運営し、収支構造を健全化すること」と想像しがちです。
一方、「経営」と言う言葉を辞書で引くと「事業目的を達成するために、継続的・計画的に意思決定を行って実行に移し、事業を管理・遂行すること。また、そのための組織体」とあります。
いささか極論になりますが、我々はタウンマネージメントを「動機付けの方法論」という視点で見て生きたいと思います。
GEのCEOであったジャック・ウエルチ氏は辣腕経営者で全世界的に有名な方ですが、彼の行ってきた経営は、M&Aや業務整理などの収益強化策が柱となる一方で、常に社員のやる気を引き出す方法(それもかなり現実的な手法で)に集中しているように見えます。
また、経営の師と言われるピーター・F・ドラッカー氏は「あらゆる組織が三つの領域における成果を必要とする。すなわち、<直接の成果(経営上の業績)><価値への取り組み(明確な目的)><人材の育成(明日のマネージメントに当たるべき人間を今日用意する)>の三つである。三つの領域の全てにおいて成果を上げられなければ、組織は腐りやがて死ぬ(ピーター・F・ドラッカー「プロフェッショナルの条件-いかに成果を上げ成長するか-」2000年)」と言っています。
日本においては、飲食チェーン店大手のワタミグループ渡邉美樹社長は、夢の実現を社員と共有するために、社員や社員の家族の誕生日や記念日など、あらゆる機会に手紙を書き、夢を語り続けているそうです。このように、経営という意味には、組織の目指す価値観値や人材育成を重要な視点として含んでいると言えるでしょう。
このように考えますと、マネージメントとは、組織の成果(営利組織の場合は金銭的利得、非営利組織の場合は事業目的の達成)を第一義とし、それを達成する根底には組織の持つ価値や人材の活用というメンタリティの部分が多く関係していると言えそうです。
そこで、タウンマネージメントとは何かを今一度問い直してみます。
「まちの存在価値を問い続け、それを実現化するめに行動する技術論」と定義できないでしょうか。少なくとも、そのようにとらえると今から説明するMPがわかりやすくなります。
以上、MPから学ぶべき点を列挙してきましたが、我々は日本のまちづくり・まち再生にMSPを持ち込もうという考えでは決してありません。あくまで、これを参考に行動しようと言うことです。
実体は行動の中からしか生まれません。信念を持ち、アイデアを実行し、それを検証して、次の活動につなげる。そして、この一連を記録し、読み返す。このアプローチしか実体は築けないし、その一連の活動がなければ将来を読む力も養われないと考えます。
この記事は毎週発行するので、一回当たりA4版2~3枚程度の原稿にしようと思います(短いと思われる方はご連絡ください)。そろそろ分量になりました。次回から、「プロフェッショナルガイド」の解説を始めます。
スポンサードリンク
サイト内関連記事
- タウンマネジャー研修
- 商店街再生プロジェクトを始めます。 当面、我々が先行事例として参考にしている米国......
- タウンマネージメント
- 平成18年9月8日、「中心市街地の活性化を図るための基本的な方針」が閣議決定され......
