メインストリートプログラムの発足

今回は、いよいよメインストリートプロフェッショナルガイドに入ります。
『プロフェッショナルガイド』には再活性化の実践方法が記述されています。そのイントロダクションではメインストリートプログラムが開発された1980年頃の背景やメインストリートの哲学などが記述されています。
ある意味、現在の日本と似ているところが随所に見られます。そして、その経験から得られた再活性化のポイントが記されています。非常に重要な示唆だと思いますので注意して読んでください。それでは解説を始めます。本文を黒字、解説を青字で書きます。

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Revitalizing Downtown(中心市街地の活性化)
The Professional's Guide to the Main Street Approach(メインストリート専門家ガイド)

はじめに
中心市街地の活性化に向けてのメインストリートの取り組み

過去40年間、アメリカのダウンタウンは大きく変化した。州間を結ぶ幹線道路の建設や継続して行われる郊外開発がアメリカ人の生活や仕事、余暇の過ごし方を変化させた。移動ルート(幹線道路)の改善に伴って移動がより容易になり、人々はより遠くへ行き、仕事や買い物をするようになった。そして、辺境のロードサイドストリップやモールに行くようになった。

ロードサイドストリップ:道の脇の細長い空間のこと。ここでは幹線道路脇に長く連なるロードサイドショップを意味する。日本でも地方に行くと郊外の辺境地でロードサイドに連なる店舗を見かける。アメリカのそれは、多少の違いがあるが、同様のものである。
モール: 日本で言うところの郊外大型ショッピングセンターのことをアメリカではモールという。

全米のいたるところで、町々において、次のような話が繰り返された。街なかのビジネスは閉鎖し、あるいは、モールへと移動し、買い物客は姿を消し、不動産の価値と売上税の収入は減少した。

ビジネス:本文でもbusinessと記されており、小売商店だけでなくサービス業や個人営業の事務所なども含めて街なかで営まれている様々な商売活動全体を意味している。

いくつかのまちでは、そこに住み、商いをする人たちの無気力がさらに街を沈滞させた。ほったらかされた建物、閉店して板を打ち付けられた店先、誰もいない、ごみの散らかった道。街なかには何も起こらない、そこを守る価値はないという人々の認識が徐々にそれを強化する。人々は、彼らにとって街なかが重要であること、そこにある歴史的商業建築が彼らの地域社会の独自性を反映していること、そしてその遺産であることを忘れてしまった。

まち:本文ではcommunityとういう言葉が使われている。「まち」と訳したが、日本の市町村の単位のことではない。概念としてのまちである。ちなみにWikipediaでコミュニティを引くと「共同体」が検索される。そこでは「利害を共にして暮らす人たちが集まる範囲、組織」と解説されている。

歴史的商業建築:MSPは歴史的建築物の再生利用を趣旨としている。そのため歴史的建築物に関する記述が多い。しかし、日本においては防災や道路拡幅など基盤整備の必要性が高い。状況に応じて考えるべきである。

多くのまちで、街なかの商業者や地権者は、彼らの競争相手(ショッピングセンター)をまねすることで、衰退のスパイラルに歯止めをかけようとした。彼らは伝統的な商業建築をアルミニュームやベニヤ、色とりどりの外壁で囲い、ぎらぎらして大きすぎる看板を屋上正面に錨でとめた。いくつかのまちでは、ショッピングにやってくる人々の歩行環境を改善するために車交通をすべての中心街から閉ざしてしまうことによって衰退を逆転させようと試みた。

しかしながら、たいていの場合、それらの善意の努力(しかし普通効果がない)は街なかの売上や財産の価値を安定することにつながらなかった。その代わりに、街なかと消費者をさらに隔てることになり、衰退を強めていった。そして、必ず、その様な試みは街なかの歴史的建築的建物に損傷を与え、街の遺産を徐々に崩壊し、街の様相を均一化して行くことにつながった。

まちの商業地域を再活性化する必要性は明らかである。健全で活力ある街なかは、まちの遺産の保全、経済の健全性、市民の誇りにとって非常に重要である。その理由は、健康な街なかは仕事・働く場を維持し、そしてそれを作り出す。また、健康な街なかは力強い税基盤をとなる(長期にわたる再活性化は行政サービスの効率化と税収入の安定化に貢献する)。再活性化された街なかでは、商品とサービスの選択肢が広がる(選択の幅は衣料品や食品、専門サービスなどの基礎的商品だけでなく居住や娯楽などの機能も広がる)。最後に、再活性化された街なかは、地域社会の思いやりと質の高い生活の象徴であり、まちとしての共同体の意識に影響を及ぼす。

メインストリートプロジェクト
1977年、全米中の街なかが不景気にある中、伝統的商業建築に対する脅威を心配したナショナル・トラスト・フォー・ヒストリック・プリザーヴェーション(NTFHP)はメインストリートプログラムを始めた。

ナショナル・トラスト・フォー・ヒストリック・プリザーヴェーション(NTFHP):メインストリートセンターの母体である全米規模の環境保全団体(非営利法人)である。このように、MSPの初期は歴史的建築物の保全が目的の中心だったと思われる。しかし、その後、歴史的建築物の保全は、街なかの活性化の手段となってくる。
このように、MSPは民間(非営利団体)が中心になり開発した手法である。この点が我が国と大きな違いと言える。しかし、我が国においても民間(非営利団体)がまちづくりの中心となりつつある、その方向に向かっていることは間違いない。

3年間のデモンストレーションプロジェクトは以下の目的で計画された。
それは、街なかが死にかけている原因を究明し、街なかの健康に影響を与えている要因を確認する、そして最終的に、歴史的商業建築を守る総合的再活性化策を構築する。

5,000人から38,000人の人口規模の70のまちの中から、3つのパイロットプロジェクトが選定された(ゲースルバーグ・イリノイ州、マディソン・インディアナ州、ホットスプリング・サウスダコタ州)。

パイロットプロジェクト:3地区でパイロットプロジェクト(実験プロジェクト)が実施され、その経験を元に手法を組み立てる実践的方法が採用されている。非常に重要なポイントである。また、パイロットプロジェクトの3地区は1970年代、米国中西部の鉄鋼斜陽地帯と呼ばれた地域である。

ナショナルトラストは、それぞれのまちの財産やニーズに関する分析結果を提供することによりその活動を支援した。その活動とは、まちの建築物に関する特徴や経済に関する特徴を分析し、再活性化計画を立案し、また、街なかの歴史的建物を再利用することで経済的な再活性化を図る政策を立案することである。それらは、ナショナルトラストがコンサルタントを指導して実施された。

ここまで読むと、日本の長濱や豊後高田、川越などをイメージする方も多いと思う。確かに再生利用という点で優れた方法である。しかし、この点に目がいってしまうとMSPを歴史的まち再生の手法と捉えてしまう。我々は、後述するようにタウンマネージメントの技術論として捉えている。

製造業者のバード・アンド・サンから助成金を得て、ナショナルトラストは常勤のメインストリートプログラムマネージャーをそれぞれの町のために雇用した。プロジェクトマネジャーの役割はまちづくりの啓蒙活動を行うことである。また、プロジェクトの調整を行うこと、商業者や土地・建物のオーナーを説得すること、市に資金提供を約束させるために活動すること(それは長期にわたる税収入として還元される)である。実際、3人のプログラムマネージャーが地域を活性化させるための調整役として働いた。

デモンストレーションプログラムの間に、街なかを活性化するという目的をもつメインストリートの取り組みの基礎は作られた。

3年で明らかになったことは、1強力な公民のパートナーシップ、2明確な目的と目標を持つ組織、3常勤のプログラムマネージャー、4計画の達成への強い意志(コミットメント)、5質の高いマーケッティング計画、6調整と見直しの過程(プロセス)、などの重要性である。

以上の6点が重要点としてあげられている。我が国にも共通することではないだろうか。3常勤のプログラムマネージャーについて、「その必要性が高いことは分かるし、同感だがいったい誰がその給料を払うのか。メインストリートでは誰が払っているのか」という質問を受ける。この点については今後解説していく。メインストリートの収入源は場所によってそれぞれ異なるが、行政からの補助金、自主運営収入、メインストリート組織への寄付金で構成されている。アメリカと日本とでは徴税システムが異なっており、アメリカではまち再生に関する資金の多くが地域の自主的徴収により賄われている。日本では、やはり行政からの補助金を中心とした資金とする必要があるのではないだろうか。

3つのまちのビジネスは、ほとんどの活性化指標において改善を示した。
ホットスプリングでは7つの新たなビジネスが開業し、マディソンでは6つ、ゲールスバーグでは30が開業した。売上税はホットスプリングでは25%増加し、一方、ゲールスバーグでは街なかの店舗の満室率は95%になった。その上、それぞれの地域のメインストリートプロジェクトに11百万ドル(13億2千万円)が投資された。最も重要なことは、たくさんの建物が再生され、物件として再活用されるようになり、それぞれのまちの独自の遺産としてまたまちの重要な象徴として保全されたことである。

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