まちのマーケッティング(1)

今回からメインストリートプログラムで行われている「まちのマーケッティング」について紹介します。
メインストリートプログラムのフォーポイントアプローチの内、経済再生委員会の分掌とされるものです。その内容は、商圏分析、商業需要分析、売上予測、販促・売り込み計画、テナントミックスなどとなります。
この分野は、当ホームページの「中心市街地の活性化」のコーナーでも詳しく紹介をしてきました。これから紹介するメインストリートプログラムの方法は、基本的には同様のものですが、対象をボランティアとしているため、素人でもわかりやすく、また具体的なやり方を紹介しています。
ちなみに、いわゆるマーケッティングと称されるこの分野はメインストリートプログラムでは専門家が多く関わる領域とされており、素人では取り組みにくい分野と言えます。我が国においても、中心市街地活性化の計画を作るための調査や解析方法、コンセプトの作成、マーチャンダイジングの検討方法など、その方法を具体的に解説した図書・情報は少ないかと思います。(その意味で当HPの「中心市街地の活性化」は絶大なご支持をいただきました。ただし、専門的すぎて多少難しかったのではないでしょうか。)
それをボランティアが行えるように解説し、具体的な取り組み方法まで紹介したものがこれからご紹介する「まちのマーケッティング」です。ちなみに英語ではretail market analysis(リテイルマーケットアナリシス)と称されており直訳すると「小売商業分析」ですが、まちのマーケッティングと意訳させていただいています。
それでは始めます。

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1997年2月
ケネディスミス、ディレクター
ナショナルトラストメインストリートセンター ワシントンDC

私がメインストリート・マネジャーとしてスタートした15年前、誰一人としてダウンタウンのマーケット分析を行うことなど考えていなかった。地域をプロモートする戦略はなかった。地域を支援する企業のリストもなかった。経済再生に向けてどのようにダウンタウンが行動するかという考えもなかった。地域にどのようなビジネスや建物があるかといった総合的なデータすらなかった。
ダウンタウンの祭事に関する年間予定は、ターゲットを考えない単なる年間行事の羅列に過ぎない古い構成だった。テナントや企業の誘致は、特定の顧客のために特定のテナント・企業を引きつけるアクティブなストラテジ(戦略)と言うよりも受け身的な活動だった。もし、誰かが私のオフィスに入ってきて「ダウンタウンで商売を始めたいのだが」と申し入れて来た時、我々は空き店舗について語ることが出来たが、語れるのはそれについてだけだった。
しかし、メインストリート組織の役員たちは明らかに望んでいた。空き店舗をなくすことを。毎週、喜んだ買い物客でダウンタウンを満杯にすることを。そして、ダウンタウンの建物をまちで最も価値のある財産にすることを。これらの奇跡がダウンタウンマネジャーに期待されていた。

それは希望のない状況だった。ダウンタウンを活性化させる糸口も見えないのに一体、どのようにしてテナントや企業を誘致することができるのか。「どんな客層がいるのか、土曜日の交通量はどの程度か、賃料の水準はどの程度か」などを語ることができないような商業地域に有能な企業の店舗開発担当者が店をオープンさせたいと思うだろうか。我々が誘致しようとするテナントや企業の店舗開発担当者のごく当たり前の質問に、我々が情報を欠如しているせいで答えられないとしたら、どうして彼らを誘致することが出来るのだろうか。

空白を埋めるために我がしなければならないこと、そして健全なビジネス戦略を組み立てるためにしなければならないこと、それは「まちのマーケッティング分析」であった。

ダウンタウンはモールではない。
小売商業分析の開発に関して最も専門的な分析を行っているのはショッピングセンターのデベロッパーであることを私は知った。しかし、中心市街地はショッピングモールではない。

ショッピングセンターは、衣料品を売ることを主として計画される。衣料品、宝飾品、靴は、全てのショッピングセンターにおいて、売り上げの多くを占める売り場である。かつてアパレルはショッピングセンターの売り上げの9割を占めていた。しかし、ショッピングセンター産業が隆盛を極めるにつれ、ショッピングセンターのデベロッパーは、テナントの魅力をより高めるため、補佐的な業種に注目し始めた。レストランや書籍、おもちゃなどである。またそれが、衣料品がショッピングセンターで生き残っていくための基本戦略となった。

ショッピングセンターを開発するとき、デベロッパーはそのまちの全体需要を計算する。そして、新しいショッピングセンターが獲得できると信じる売上額を推計する。これは、何か特別な方法により計算されるわけではない。簡単な計算プログラムによる単純な計算である。次のように行う。

衣料品の年間家計支出額×そのまち(あるいは地域)の世帯数=新しいショッピングセンターの潜在的売上額

デベロッパーは、新しいショッピングセンターの潜在的売上額をショッピングセンターの床当たりの年間売上額で割り、そのまち・あるいは地域におけるショッピングセンターの床需要を求める。これが新しいショッピングセンターの大きさとなる。

もし、そのエリアに他の強力な衣料品店があったら、デベロッパーはそれを考慮に入れて新しいショッピングセンターが獲得できそうな売上額を想定する。しかし、率直に言って、多くのデベロッパーはそれを気にすることはない。なぜなら、彼らは地域一番であることを求めるからだ。
新しくて洒落たショッピングセンターがオープンしたとき、彼らはマーケットから彼らの競争相手をたたき出すことを計画する。ショッピングセンター産業は非情なビジネスである。

この推計方法は効果的である。しかしながら、歴史的・伝統的な商店街にこれを適用することは適さない。それにはいくつかの理由がある。

第一に、ほとんどのショッピングセンターデベロッパーは、全てのシェアにおいて最も多くを占める中級所得者を対象とする。デベロッパーは、中級所得者が衣料品に費やすお金の平均に基づいて推計を行う。
さて、中心市街地は、均一的な居住者の人口構成になっていない。ほとんどの中心市街地が幅の広い多様な消費者で構成され、そこに立地するビジネスは幅広い対象に対応している。
私が15年前にメインストリート・マネジャーをしていたダウンタウンでは、高額所得者向けの東洋風絨毯の店が五つあった。そして、三つの安売り店があった。ショッピングセンターでは、このように異なる消費者がミックスしているようなことを見ることはないだろう。

第二に、ショッピングセンターは、通常、ワンオーナーである。一般的にはショッピングセンターのデベロッパー会社がオーナーである。ショッピングセンターデベロッパー会社、あるいはSC管理会社は、どこに店を配置するか、営業時間をどうするか、販売促進イベントの参加費を徴収し、その他多くのことを命じることができる。伝統的商店街は、多くの異なる権利者により所有され、使用されている。そのことが、テナントミックスや商店街の統一運営をより複雑にしている。だから、このことを意識した「まちのマーケッティング」が必要になる。

第三に、伝統的商店街では土地利用がショッピングセンターのよりも多様である。SCは小売店舗である。それで完結する。伝統的な商店街は一般的に、住宅や小工場、公共施設、宗教施設、その他の非小売り施設を含んでいる。そして、それぞれの利用が地区の小売り機会に直接的な影響を持っている。
それらの違いにおいてもっとも重要なことは商圏の違いである。すなわち、消費者を吸引できる地理的範囲である。SCは明確で、比較的均質な商圏を定義することが出来る。たとえば、ミッドプライスの婦人向け衣料品店は、ミッドプライスの子供服店やミッドプライスのファミリー向け靴店とほぼ同じ商圏を描く。

しかし、伝統的商店街は多くの個別の商圏を持っている。なぜなら、商店街は多種多様な使われ方をしているからである。一例を挙げれば、商店街にはニューススタンド(新聞を販売するスタンド)がある。その商圏は基本的には商業地域そのものとなる。しかし、心臓内科医もそこにはいる。心臓内科医のお客(患者)は数百マイルからやってくる。これが意味することは、商業分析をする上で、あなたが推計しようとしている商品やサービスの需要に基づいて、多くの異なる商圏の潜在消費額を検討する必要があるということである。

中心商店街の小売商業分析の方法はショッピングセンターの商業分析とは、」このようにいくつかの点で異なってくる。SCは均一的な分析であり、伝統的商業地区はより複雑化していると言ってよい。

それではどのようにして進めるべきか?

第一にそして真っ先に、あなたは小売商業分析の基礎を学ぶべきである。それにより、あなたの商業地区がどのようにしたら成長できるかということを理解できるようになるだけでなく、地区の経済的ポテンシャルがどの程度であるか、そして活性化対策の効果はどの程度か、さらにそれを継続的にモニターする、という一連の流れを理解する手助けとなるだろう。
幸運にも、その方法は、四則演算以上の複雑な数学を含んでいない。


今回はここまでとします。次回も「まちのマーケッティング」を続けます。

「メインストリート成功の要因」(第5回掲載)と「メインストリート8つの原則」(第7回掲載)を文末に載せます。回を重ねるごとに、全体の構成が見えにくくなります。ポイントを読み返していただくと、今回の記事の位置づけが理解しやすくなると思います。

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