まちのマーケッティング(3)
前回に続き「まちのマーケッティング」の手法を紹介します。今回は第2ステップ「まちのポテンシャルを把握する。」です。
前回の第1ステップ「地区の現況を把握し、定義する。」では価格と業種について述べられていました。「まちの商業を捉えるとき、価格と業種で捉える必要がある。」、すなわち、一定の価格に特化し様々な業種構成を持っているのか、それとも一定の業種に特化し価格帯の幅を持っているのか。価格と業種を軸性とするグラフにその構成をプロットすると、自分のまち、あるいは競合とするまちの特徴を把握することが出来る、というものでした。
我々は、業種の構成でまちの商業を把握することはよくあるのですが、価格の軸性まで考慮することは忘れがちです。それは、価格帯に関する商業統計がないことに原因があると思うのですが、感覚的にでも良いので、価格に関する情報を加えてみると、まちマーケットの特徴をよりよく理解することができると思います。
今回は「まちのポテンシャルを把握する」です。簡単な計算で需要を把握する方法を紹介します。それでは始めます。
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第2ステップ:まちのポテンシャルを把握する
それでは、価格と業種のグラフを横に置き、計算機を取り出そう。
まちのマーケッティングの第2段階は、あなたのまちに存在する様々な商品やサービスの潜在需要を把握することである。潜在需要が推計できたら、潜在需要のうちどの程度が獲得できていて、どの程度が流出しているのかを推計する。
「潜在需要」とは、あなたのまちに住んでいる人が年間に消費している商品やサービスの金額を意味する。それは、家計消費に関する統計値と世帯数のかけ算で算出することができる。潜在需要を求めるために必要とするいくつかの基本データがある。
まず、消費調査に関する統計(Consumer Expenditure Survey アメリカ人の消費動向を追っている米国労働統計局によって作成されている資料)が必要である。
△我が国においては「家計調査年報」という統計調査があります。この調査は全国的に家計消費動向を詳細に記録しているものですが、残念ながら市町村データとして公表されていません。
家計消費は、世帯の人数、年齢層、年収、地域の物価水準、風土などにより差があると思われます。よって、地域によって差があって当然です。しかし、この調査ではそこまで理解することはできません。
そのため、マーケッティングの専門会社では家計調査年報をベースに地域ごとの家計消費を推計する方法(コンバーター)を開発しています。しかし、一般的には家計調査年報のデータで十分でしょう。あるいは、あなたのまちの役所で家計調査年報の原データ(集計前のデータ)を所有していれば、それを用いるということも考えられます。
次に、あなたは、人口統計が必要である。それは、あなたが検討しようとする商品やサービスの商圏に住む人たちの収入、年齢、世帯の規模などの情報である。(この場合の商圏とは、業種により異なることを覚えておいてほしい。新聞スタンドの商圏は心臓内科医の商圏よりもはるかに小さなことを。)
人口統計を入手するもっとも良い方法は、米国統計局のワールドワイドウエブサイト(http://www.census.gov/cdrom/lookup)から得ることである。そのオンラインの指示に従って、あなたが検討したい国、市、町のデータを入手する。もちろん、もっと原始的な方法もある。図書館に行けば、州や市の人口データを入手することができる。
△我が国では「国勢調査」というデータがあります。5年に一度全国規模で実施されている悉皆調査です。こちらは市町村単位はもとより、地域メッシュデータとしても集計されているのでより詳細な分析が可能です。しかし問題は5年に1回ということです。直近年のデータを希望するのであれば、役所から入手することができますが、この場合、年収などの世帯属性に関することは不明(秘匿)になります。
最後に、あなたが潜在需要を計算しようとしている商品やサービスのリストを作る。まず、「衣料品」「飲食店」「家具」などの一般的な分類から始め、だんだんと特定のものにしていく。
まちの潜在需要を計算する公式は「潜在需要=まちの世帯数×世帯当たり消費額」である。
推計は、マーケッティングの目的に応じて多少異なってくる。すなわち、あなたが、食料品店を新規に開店する、あるいは既存店を増床するのであれば、食料品店が対象とする商圏に応じた潜在需要を求めなければならない。
もちろん、その他の商品やサービスに関する計算をすることもあるだろう。注意しなければならないのは、商品とサービスに応じて商圏は異なるということである。(再度言うが、新聞スタンドと心臓内科医の商圏は異なるのだ。これがまちのマーケッティングの特徴の一つである。)。
検討したい全ての商品やサービスの潜在需要を推計したら、次に行うことは何か。
この情報(潜在需要)は様々な使い方ができる。しかし、もっとも重要な使い方は、あなたのまちの潜在需要と実際の販売額を比較することである。すなわち、居住者が消費するすべての消費額を獲得しているか否かを調べるのである。この方法は「セールスギャップ分析」と呼ばれている。
あなたのまちにおける実際の小売販売額に関する情報は、州の税務事務所の年間収入、あるいは小売販売額に関する公表されたデータから得られることができる。もし、あなたの州がこのデータを公表していなければ(例えば、デラウエア州やフロリダ州のような小売販売額税を課していない州に住んでいたら)、あなたは5年ごとに出される米国統計局が出版する小売商業統計から情報を得ることができる。
△我が国では商業統計表という調査があります。
理論的には、実際の販売額よりも潜在額が多ければ、あなたのまちは売上げを流出している。つまり、現況のビジネスを強化するか、あるいは、新たなビジネスを開発するかにより、より多くのお金を獲得する可能性がある。
同様に、潜在消費額よりも実際の販売額が多ければ、あなたのまちは他の場所からお客を引き寄せている。つまり、そのまちの居住者により生み出される消費額以上に販売額を獲得している。その様な場合、あなたのまちは飽和状況にある。
しかし、もちろん、常に例外がある。たとえば、数値上、潜在需要と販売額の差が飽和状況にあっても、ある種の商品の販売が下降していない例外的な例はある。
また、飽和状況にある業種は「増床をすることができない」ということを必ずしも意味するものでもない。飲食店街や骨董品店街は、特化した商店街として知られる好例である。そこは、自分のまちの外から買い物客を引き付けている。その結果、自分のまちの居住者から生じる需要を凌ぐ販売を獲得している。
これが意味することは「あなたのまちに立地できる商品やサービスの業種とその量について、責任ある結論を導くには、セールスギャップ分析で得られる情報よりも多くの情報が必要だ」と言うことだ。そのためには、あなたはお客から直接情報を集める必要がある。
次回は、この情報を集めるためにどのような調査を行うか、また、どのようにしてこれらのデータをまとめ、商業計画をつくるかについて紹介する。
△今回はここまでとします。次回は「まちのマーケッティング」の第3ステップ、消費者調査の方法について紹介します。
「メインストリート成功の要因」(第5回掲載)と「メインストリート8つの原則」(第7回掲載)を文末に載せます。回を重ねるごとに、全体の構成が見えにくくなります。ポイントを読み返していただくと、今回の記事の位置づけが理解しやすくなると思います。
■ メインストリート成功の要因(第5回掲載)
1 強力な公民のパートナーシップ
2 明確な目的と目標を持つ組織
3 常勤のプログラム・マネージャー
4 計画の達成への強い意志(コミットメント)
5 質の高いマーケッティング計画
6 調整と見直しの過程(プロセス)
■ メインストリートの8つの原則(第7回掲載)
1 メインストリートアプローチは中心市街地活性化に向けての包括的アプローチである。
2 メインストリートアプローチは質を大切にしている。
3 有意義で長期間の中心市街地活性化を可能にするために公民のパートナーシップが、必要である。
4 メインストリートプログラムは意識の変化を取り込んでいる。
5 メインストリートプログラムは現存する資産に焦点を当てている。
6 メインストリートは自主的活動である。
7 メインストリートの取り組みは徐々に成果が現れる。
8 メインストリートプログラムは実践志向である。
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