まちのマーケッティング(4)

前回に続き「まちのマーケッティング」について紹介します。
前回は第2ステップ「まちのポテンシャルを把握する」を紹介しました。家計消費額と世帯数から潜在需要を推計する方法でした。
今回は第1ステップ「地区の現況を把握し」と第2ステップ「まちのポテンシャルを把握する」の整理です。前回、今回、第3ステップ「消費者調査の方法」をご紹介するとお知らせしましたが、一つ間をおきたいと思います。それでは始めます。

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【第1ステップと第2ステップのまとめ】
1 商店街とショッピングセンターのマーケッティング分析は異なる。
2 商店街とショッピングセンターの商圏の考え方は異なる。ショッピングセンターの商圏は衣料品に代表される均一的なものであるが、商店街の商圏は多元的なものである。ニューススタンドの商圏と心臓外科医の商圏が異なることを忘れてはならない。
3 商店街の活性化は、常に現状の力の上にある。まちのマーケッティングは既にもっている力の把握から始めること。
4 マーケットの潜在的な力とお客のニーズの両方があるビジネスに焦点を当てること。人々は本屋がほしいというかもしれないが、それを支えるだけの十分な需要がない場合もある。人々が望むもので、また、マーケットとして支持できるものにビジネスの狙いを付けること。
5 まちのマーケッティングは正確な科学ではない。意志決定のための道具である。そのためにより良い情報を提供する手段である。
6 何かを知ることは何も知らないことより良いことである。あなたが既に持っている情報から始め、学ぶにつれてだんだんと情報を付加していく。すべての情報が整うまで待っている必要はない。
7 時間がたてば、お客の好みや習慣は変化する。今年行う販売促進活動は来年の人々に対してアピールするものではない。お客の趣向について行くこと。
8 消費者が抱くまちのイメージは、マーケットの需要と同様に活性化の成否に影響を与える重要なものである。もし消費者が、あなたの地区は安全ではなく、店は不親切で、営業時間は短く、値段はとても高いと思いこんでいたら、世界中にいかなる需要があっても、あなたのまちではいかなる商品も売れない。
9 郵便を使った調査は役に立たない。その方法は、郵便調査に協力する人々の大量のデータを与える。しかし、郵便調査に協力する人々は郵便調査が好きな人たちであり、一般大衆のものではない。郵便調査は、ことマーケットに関し、信頼できるものごとを一言たりとも語らない。
10 あなたは、コンサルタントよりもまちのことをよく知っている。コンサルタントは複雑な計算や商業分析の局面においての手助けはできる。しかし、その地域だからこそできる意志決定を、現実感を持って行うことはできない。

【潜在需要の計算】
もし、あなたの商圏に10,000の世帯があり、食料品の平均的な年間消費額が2,700ドルである場合、あなたの商圏の総合潜在消費額は年間27,000,000ドルである(10,000世帯×2,700ドル/世帯)。
単純にはその通り。それでは、もう少し複雑に実際のデータを計算しよう。世帯収入や世帯の規模、年齢、その他の要因により、商品やサービスの消費額は異なっており、家計消費額も異なっている。そのため、あなたのまちの人口構成を正確に反映させるためには、収入、年齢など別に計算を行う必要がある。

△以下で紹介する方法はアメリカでおこなわれている方法です。残念ながら、我が国では、世帯収入別に集計された家計調査がありません。そのため、収入や年齢を反映させた潜在需要は簡単に推計することはできません。そのため、コンサルタントは、家計調査から収入別の家計消費額を推計するコンバーター(変換モデル式)を開発しています。
一般的にはトータルの消費額で十分ですが、家計収入別に消費額を推計する場合、以下のようにおこないます。

人口統計では10,000世帯を収入階層別に以下のように分けている。
5,000ドル以下                400世帯
5,000ドルから10,000ドル        550世帯
10,000ドルから15,000ドル       650世帯
15,000ドルから20,000ドル     1,100世帯
20,000ドルから30,000ドル     1,900世帯
30,000ドルから40,000ドル     2,200世帯
40,000ドルから50,000ドル     1,700世帯
50,000ドルから70,000ドル     1,000世帯
70,000ドル以上               500世帯

家計消費調査では、食料品に関する年間消費額を収入階層別に掲載している。
5,000ドル以下               1,703ドル
5,000ドルから10,000ドル       1,790ドル
10,000ドルから15,000ドル      2,200ドル
15,000ドルから20,000ドル      2,437ドル
20,000ドルから30,000ドル      2,598ドル
30,000ドルから40,000ドル      2,834ドル
40,000ドルから50,000ドル      3,176ドル
50,000ドルから70,000ドル      3,582ドル
70,000ドル以上              4,023ドル

以上により、あなたのまちの商圏における収入階層別の食料品消費額は次の通りである。
世帯収入 世帯数   家計消費額  潜在需要額
5,000ドル以下:    400世帯 × 1,703ドル = 681,200ドル
5,000~10,000ドル:  550世帯 × 1.790ドル = 984,500ドル
10,000~15,000ドル: 650世帯 × 2,200ドル = 1,430,000ドル
15,000~20,000ドル: 1,100世帯 × 2.437ドル = 2,680,000ドル
20,000~30,000ドル: 1,900世帯 × 2,598ドル = 4,936,200ドル
30,000~40,000ドル: 2,200世帯 × 2,834ドル = 6,234,800ドル
40,000~50,000ドル: 1,700世帯 × 3,176ドル = 5,399,200ドル
50,000~70,000ドル: 1,000世帯 × 3,582ドル = 3,582,000ドル
70,000ドル以上: 500世帯 × 4,023ドル = 2,011,500ドル
食料品に関する総合潜在需要額    = 27,940,100ドル

△平均すると27,940,100ドル÷10,000世帯=2,794ドル/世帯です。全国平均の2,700ドルに対し若干高いことになります。数字上は94ドルの差に過ぎません。しかし、この数字はより重要な情報を与えてくれています。それは需要の質です。年収5,000ドルの消費者と70,000ドルの消費者では求めるもの(質)が異なります。このことを理解しなければなりません。
ディスカウントショップからブランドショップまで消費の質が多様化している現在、中間的な消費者層に焦点を当てた大量販売(スーパーストアー)の発想では需要を獲得できなくなっています。誰に対してサービスを行うのか、このことは商店街の活性化にとって重要なことだと思います。

今回はここまでとします。次回は、まちのマーケッティングの第3ステップ「消費者調査の方法」について紹介します。

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