3.商業勢力圏の設定手法

 これ以降は、具体的にシミュレーションモデルを使って商圏設定から売上可能額および投資限界値をエスキスする手法を段階をおって説明します。

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 まず一番に行う必要があるのは地図を用意し、その中に人口分布、交通体系(鉄道・道路)、主要な商業集積地を書き込むことです。この地図は今後の検討のベース図として利用します。

 次に、基礎的なデータを一覧表に整理します。[商業基礎表]この表には必要な諸元として各都市の人口、世帯数、販売額、売場面積及び世帯当消費額を入力します。この段階において地図上でおおむねの商勢圏を判断しておく必要があります。そして商勢圏内都市全てについてデータ入力する必要があります。商圏拡大のシナリオ検討などに備えて、想定される商圏よりやや広めに、競合都市とその傘下の従属都市まで含めておくことがポイントです。

 このデータ入力を行うと各都市の潜在消費額、パナー指数が算出されます。そこで地図上に、パナー指数等の商圏特性を示す指標を書き加えます。この地図をベースに地域の商勢圏の構造を読み取り、客観的な商圏設定について検討します。
(作図例:図15商圏構造とその動向)
(商圏特性の読み取りについては6章を参照)
 次に吸引率を設定します[吸引率表]。この表は表の左側(行方向)に居住地を、表の上側(列方向)に商業地を示すマトリックスとなっています。例えば最寄品ではA市からB市に33%の消費者が買物に行っていることを示しています。ここまで入力を済ませると、自動的に[吸引世帯数]、[吸引額表]が表示されます。それぞれの算出は以下のようになっています。

(n市→m市)吸引世帯数=n市の世帯数×(n市→m市)吸引率
(n市→m市)吸引額=(n市→m市)吸引世帯数×世帯当消費額

 従って、吸引率が高くても母数の世帯数が小さければ吸引額のウェイトは小さくなり、逆に吸引率が低くても母数の世帯数が大きければ吸引額のウエィトは大きくなります。そのため重要な吸引方向を判定する場合には、吸引率だけでなく吸引額で検討する必要があります。
 [商圏設定]では、各都市からの吸引率、吸引額とあわせて吸引構成比としてA市の全体吸引額に占める各都市からの吸引額の構成比を示しています。例えば買回品ではA市自体からのものを除くと、B市の14%が最も高い構成比を示しています。B市からA市への吸引率は2%と低い水準ですが、母数の世帯数が他都市に比べ際立って多いため、このような結果になります(ただし、B市は高い吸引力をもつ商業中心都市であり、B市市民がA市に買物に来ることを期待するのは無理があるといえるため、ここではB市商圏に設定していません)。

 ここで吸引率、吸引額および吸引構成比の各指標と商圏構造図をあわせてどの範囲を商圏として設定するのか最寄商圏、買回商圏ごとに検討します。モデル例ではA市買回商圏として現況吸引率が高いG町、H町をまず選択し、ついで6章のモデル例で検討したように人口の伸びが高く吸引向上が見込めるF町、および吸引構成比が7%と比較的高いD市を戦略的に獲得すべき商圏として選択しています(いずれも吸引動線の整備改善を前提としています)。

 最寄品は買回消費に伴うついで買いを除くと一般にほぼ地元商業で充足される傾向が強く、商圏は狭くなるため現況10%以上の吸引率を示すG町、F町を選択しA市最寄商圏として設定します(A市自体は当然に買回、最寄とも商圏に含めます)。

 [商圏設定]の左欄にある商圏選択列に"*"をチェックすることで簡易に商圏設定を試行できます。後の吸引可能額の推定と連動していますので商圏を様々なケースで設定し、エスキスすることになります。
 モデル例は、以下のように商圏を設定しました。

   a.買回商圏・・・A市、G町、H町(既存商圏)
           F町、D市   (戦略商圏)

   b.最寄商圏・・・A市、G町、F町(既存商圏)

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